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2026年03月11日

「とりあえず一律昇給」は危険?中小企業が陥る給与改定の失敗と評価連動の仕組み(Vol.11)

本日は大安の良き日ではありますが、同時に東日本大震災から15年の節目を迎える3月11日でもあります。震災により犠牲となられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、今もなお影響を受けられている皆様に心よりお見舞い申し上げます。
当たり前の日常と、社員の皆様が安全に健やかに働ける環境があることへの感謝を胸に刻みつつ、本日もヒューマンソリューションより、貴社の組織づくりに役立つ人事コラムをお届けいたします。


春は「昇給(給与改定)」の季節です。ニュースでは大企業のベースアップや大幅な賃上げが連日話題になりますが、経営体力の限られる中小企業においては、給与の引き上げは非常に悩ましい問題です。

「世間の波に合わせて昇給させないと社員が辞めてしまうかもしれない」「しかし、個別の評価をする時間がないから、とりあえず全員一律で月額5,000円ずつ上げよう」

実はこの「とりあえずの一律昇給」や「ドンブリ勘定での給与改定」が、将来的に会社の首を絞め、優秀な社員のモチベーションを破壊する大きな原因となります。

 

一律昇給がもたらすリアルな失敗事例

評価制度と連動しない一律の定期昇給は、短期的には社員の不満を抑えられるかもしれませんが、長期的には2つの大きな失敗を引き起こします。

1つ目は「固定費(人件費)の高止まりによる経営圧迫」です。 業績に関わらず毎年自動的に給与が上がる仕組みを放置すると、社員の年齢層が上がるにつれて人件費が雪だるま式に膨れ上がります。万が一、会社の業績が悪化した際、一度上げてしまった基本給を明確な理由なく下げることは不利益行為として労働法上で非常に困難であり、最悪の場合は経営危機に直結します。

2つ目は「優秀なエース社員のモチベーション低下と離職」です。 全員一律で給与が上がるということは、どれだけ売上を作って頑張っている社員も、遅刻ばかりで成果を出していない社員も、同じ額しか昇給しないということです。これでは、頑張っているエース社員ほど「この会社で努力しても無駄だ」と見切りをつけ、正当に評価してくれる他社へ転職してしまいます。

 

メリハリのある賢い給与改定のステップ

限られた昇給原資(予算)を最大限に活かし、社員のやる気と会社の業績を連動させるための具体的な解決策を3つ解説します。

 

1. 成果に応じたメリハリのある昇給テーブルを作成する

全員に薄く広く配分するのをやめ、「会社が期待する成果を出した人」「行動指針に基づく行動をした人」へ手厚く原資を配分する仕組みに変えましょう。複雑な制度は不要です。「S評価なら10,000円、A評価なら5,000円、C評価なら昇給ゼロ」といったシンプルな昇給テーブルを作成し、成果や行動がダイレクトに給与に反映されることを社内に明示してください。

2. 給与改定の理由を個別の面談で必ずフィードバックする

給与明細をポンと渡して終わりにしてはいけません。昇給額が決定した背景を、社長や直属の上司やリーダーから直接伝える場を設けてください。「今回はこのプロジェクトでの貢献を高く評価してA評価の昇給にした。来期は後輩の育成にも期待しているよ」と成果と期待値を言語化して伝えることで、数千円の昇給であっても社員のモチベーションは何倍にも膨らみます。

3. 会社の業績状況をオープンにして納得感を高める

「なぜ今年の昇給はこの額なのか」を社員に納得してもらうためには、会社の業績(売上や利益の状況)をある程度オープンにすることが効果的です。「今期は原材料費の高騰で利益が圧迫されたため、昇給原資はこの額が限界だ。しかし来期はこの目標をクリアすればこれだけ還元する」と誠実に伝えることで、社員に経営参画意識(当事者意識)が芽生えます。

【本日のまとめ】 給与は、会社から社員に対する最も分かりやすい「期待のメッセージ」です。一律のばらまきをやめ、自社の業績と個人の頑張りがしっかり連動する仕組みを作ることは、強い組織を作るための必須条件です。自社の規模に合った無理のない給与テーブルの設計などに課題を感じた際は、賃金制度のノウハウを持つ専門家を活用することをおすすめいたします。


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