大安吉日人事のコラムCOLUMN

2026年03月17日 労務・制度・法令対応

4月から6月の残業に注意!社会保険料が上がる仕組みと中小企業が知っておくべき対応(Vol.12)

本日は大安吉日に加え、「一粒万倍日」と「寅の日」が重なる大変縁起の良いトリプル開運日です!特に寅の日は「使ったお金(投資)がすぐに戻ってくる」と言われ、会社への投資や組織づくりを見直すのにぴったりの日とされています。貴社の人材への想いや投資が万倍にも実を結ぶことを願って、ヒューマンソリューションから人事のヒントをお届けします。


「4月から6月は残業させない方がいいんですよね?」

この時期になると、経営者や現場責任者からよく聞かれる話です。たしかに、4月・5月・6月の給与額は、その後の社会保険料に影響します。

でも、ここで大事なのは、
“残業は悪”と考えることではありません。

本当に大切なのは、
なぜ4月から6月が重要なのかを理解したうえで、現場を無理なく回せるように設計することです。

現場が忙しいのに、ただ「残業するな」と号令だけかけても、結局どこかにしわ寄せがいきます。

だからこそこのテーマは、
節約の話ではなく、
人事と現場運営のバランスの話として考える必要があります。

4月から6月の残業に注意と言われるのはなぜか

理由はシンプルです。

健康保険料や厚生年金保険料の基礎になる標準報酬月額は、毎年、原則として4月・5月・6月に支払われた報酬をもとに見直されます。

事業主は、7月1日現在で使用している被保険者について、その年の4月・5月・6月の報酬を算定基礎届で届け出ます。
その内容をもとに決まった標準報酬月額は、9月から翌年8月まで適用されます。

つまり、この3か月の給与が高くなると、9月以降の社会保険料も上がりやすくなる、ということです。

現場感で言えば、
春先にたまたま繁忙が重なって残業が増えた。
新年度対応でバタバタした。
人が足りず、特定の社員に負荷が集中した。

そういうことが、そのまま1年近くの社会保険料に影響する可能性があるわけです。

4月から6月の残業で本当に上がるのは何か

ここは誤解が多いところです。

よく
「4月から6月に残業すると税金が上がる」
と言われますが、正確には、まず意識すべきなのは社会保険料です。

4月・5月・6月の報酬をもとに見直されるのは、健康保険や厚生年金保険の基準となる標準報酬月額です。

そして、この「報酬」には、基本給だけでなく、残業代や各種手当なども含まれます。
だから、春先だけ残業代が大きく増えると、その影響が後から出てきやすいのです。

なぜ中小企業ほどこの問題が起こりやすいのか

中小企業では、4月から6月に業務が集中しやすい会社が少なくありません。

たとえば、

  • 新年度の立ち上がりで現場が慌ただしい
  • 異動や退職の穴埋めが終わっていない
  • 新入社員対応と通常業務が重なる
  • 決算後や繁忙期がちょうど春にくる
  • 管理職がプレイヤーとしても動いている

こういう状況では、どうしても一部の社員に残業が寄りやすくなります。

しかも中小企業では、
「今は仕方ない」
「この時期だけだから」
で乗り切ってしまうことも多いです。

でも、社会保険料の仕組みは、現場の事情とは別で動きます。

だからこそ、現場の頑張りに頼るだけではなく、
負荷がどこに集中しているのかを見える化することが必要になります。

4月から6月の残業が増えると何が起こるのか

社員の手取りが思ったより減ることがある

春に残業が多いと、そのときの給与は増えます。

ただ、その後に標準報酬月額が上がると、9月以降の社会保険料も上がる可能性があります。

すると社員から見ると、
「春は頑張ったのに、秋からなんだか手取りが減った気がする」
という感覚につながることがあります。

ここを会社が説明できないと、社員は不信感を持ちやすくなります。

制度上の話であっても、
現場では“なんとなく損した感じ”として受け止められやすいのです。

特定の人に負荷が偏っているサインになる

4月から6月だけ極端に残業が増える場合、単なる保険料の問題で終わらないことがあります。

実際には、

  • 人員配置が偏っている
  • 属人化が進んでいる
  • 引き継ぎができていない
  • 管理職が業務を抱え込みすぎている
  • 採用や育成が追いついていない

といった、組織上の問題が隠れていることも少なくありません。

つまり、4月から6月の残業増は、
保険料の話であると同時に、組織の歪みが見えるタイミングでもあります。

「残業するな」だけでは現場が壊れる

ここは特に大事です。

社会保険料を気にするあまり、
4月から6月だけ極端に残業を抑えようとすると、現場が回らなくなることがあります。

仕事量は変わらないのに、
残業だけ止めれば、結局、

  • 持ち帰り仕事になる
  • サービス残業が起きる
  • 管理職にしわ寄せがいく
  • 業務品質が落ちる
  • 現場の不満が増える

という別の問題が起きます。

これは本末転倒です。

だから、残業を減らすなら、
単に時間を削るのではなく、
仕事の持ち方そのものを見直すことが必要です。

4月から6月の残業について経営者が誤解しやすいポイント

よくある誤解1 この時期だけ残業をゼロにすればよい

そう単純ではありません。

たしかに4月・5月・6月の報酬は大切ですが、
無理にゼロ残業を目指すことが正解とは限りません。

現場が無理なく回ること。
社員が疲弊しないこと。
法令に沿って適切に労働時間管理がされていること。

この3つの方が、経営上ははるかに重要です。

数字だけ見て現場を締めつけると、
別のリスクを増やします。

よくある誤解2 4月から6月だけ気をつければよい

これも半分だけ正解です。

たしかに定時決定では4月・5月・6月の報酬が基準になります。

ただし、昇給や降給などで固定的賃金が変動し、その後3か月の平均報酬で従前より2等級以上の差が出るなど、一定の要件に当てはまると、定時決定を待たずに随時改定(月額変更届) が必要になることがあります。

つまり、見るべきなのは4月から6月だけではなく、
給与の変動と運用全体です。

よくある誤解3 保険料を下げることが目的になってしまう

ここも経営者がはまりやすいところです。

もちろん、コスト感覚は大事です。

ただ、人事として本当に見るべきなのは、
「保険料をどう抑えるか」だけではなく、
なぜその残業が発生しているのか です。

採用不足なのか。
教育不足なのか。
属人化なのか。
管理職の抱え込みなのか。

ここを見ないまま小手先で残業だけ削っても、長続きしません。

中小企業が取るべき現実的な対応

では、実際にどう向き合えばよいのか。

ポイントは、
4月から6月だけを特別扱いしすぎず、でも放置もしない
という姿勢です。

まずやるべき3つのこと

1. 残業が増えている人を早めに把握する

月末に締めてから見るのでは遅いことがあります。

4月、5月、6月は特に、

  • 誰の残業が増えているか
  • どの部署に偏っているか
  • 一時的か、構造的か

を早めに見ておくことが重要です。

ここが見えていないと、
「気づいたら3か月とも多かった」
となりやすくなります。

2. 残業の理由を分解する

残業が多いときは、単に本人の頑張りの問題にしないことです。

たとえば、

  • 業務量そのものが多い
  • 担当が固定化している
  • 教えられる人が限られている
  • 会議や承認が多すぎる
  • 採用や配置が間に合っていない

こうした背景を見ないと、根本解決にはなりません。

葆東さんらしく言えば、
残業時間は、現場の根性ではなく、組織設計の結果として出てくるものです。

3. 社員にも分かるように説明する

社会保険料の話は、社員からするとかなり分かりにくいものです。

だからこそ、
「春に残業が増えると、その後の社会保険料に影響する場合がある」
ということを、必要に応じてきちんと説明できる状態にしておくことが大切です。

説明がないと、
社員は「なんで引かれる額が増えたのか分からない」
という不満を持ちやすくなります。

制度を知っていることより、
伝わるように説明できること の方が、実務では大きいです。

4月から6月の残業を減らすための視点

業務の山をずらせないかを見る

もし毎年この時期に残業が増えるなら、
それは偶然ではなく、業務設計の問題かもしれません。

締切、会議、提出物、採用対応、教育対応。
何がこの時期に集中しているのかを一度棚卸しすると、
意外と動かせるものがあります。

属人化を減らす

「あの人しかできない仕事」が多い会社ほど、残業は偏ります。

そして、その偏りは春先に表面化しやすいです。

業務の標準化や引き継ぎ、簡単なマニュアル化だけでも、
残業の偏りはかなり変わります。

管理職の抱え込みを放置しない

中小企業では、いちばん危ないのは管理職です。

部下のフォロー、新入社員対応、数字の責任、自分の実務。
全部を抱えたまま、春の繁忙に入ると、一気に残業が増えます。

でも、管理職の負荷は見えにくい。

だからこそ、
管理職こそ早めにケアしないと、
現場全体が回らなくなります。

こんな会社は要注意

次のような状態がある会社は、Vol.12のテーマがかなり刺さる状態です。

  • 毎年4月から6月だけ残業が増える
  • 特定の社員や管理職に仕事が偏っている
  • 春に新入社員対応と通常業務が重なる
  • 残業の理由を分析せず、毎年同じことを繰り返している
  • 社員が社会保険料の仕組みをほとんど知らない
  • 経営者が「とにかく残業を減らせ」とだけ言っている
  • 総務や人事が給与変動の背景を現場と共有できていない

こうした状態があるなら、
保険料の問題だけでなく、
人員配置や業務設計まで含めて見直す余地があります。

よくある質問

4月から6月は残業をしない方がいいのですか

一概には言えません。

4月・5月・6月の報酬が、その後の標準報酬月額に影響するのは事実です。
ただし、無理に残業を抑えて現場を壊してしまっては本末転倒です。

大切なのは、必要な残業まで否定することではなく、
偏りやムダを減らすことです。

4月から6月の給与は何に影響しますか

主に、健康保険や厚生年金保険の基準となる標準報酬月額の見直しに使われます。
その結果、9月から翌年8月までの保険料に影響します。

7月以降に給与が変わったらどうなりますか

固定的賃金の変動があり、その後3か月の平均で従前より2等級以上の差が出るなど、一定の要件に該当する場合は、随時改定の対象になります。

つまり、4月から6月だけ見ていればよいわけではありません。

経営者は何を優先して見ればよいですか

まずは、
誰に残業が偏っているか。
なぜ増えているか。
毎年同じ時期に起きていないか。

この3つです。

制度だけ見ても、現場は変わりません。
現場だけ見ても、コストは見えません。
両方を見ることが必要です。

まとめ

4月から6月の残業に注意と言われるのは、
この時期の報酬が、その後の社会保険料の基準に影響するからです。

ただし、本当に大事なのは、
「この時期だけ残業するな」と言うことではありません。

見るべきなのは、

  • なぜ残業が増えているのか
  • 誰に負荷が偏っているのか
  • 毎年同じことを繰り返していないか
  • 現場が無理なく回る設計になっているか

ここです。

4月から6月の残業は、
社会保険料の問題であると同時に、
組織の状態を映す鏡でもあります。

だからこそ、
コストだけで見るのではなく、
採用、配置、教育、業務設計まで含めて考える。

それが、中小企業にとっていちばん現実的で、いちばん強い対応です。


【次回予告】3月22日(日)

夏の賞与を「ただのお小遣い」にしない!中小企業が業績アップに繋げる賞与評価のコツ(Vol.13)


葆東雅仁

この記事の著者

葆東雅仁(ほうとう まさひと)

株式会社ヒューマンソリューション 代表取締役

HR・人材領域に24年携わる人事コンサルタント。栃木県を中心に中小企業の採用・評価・育成を一体で支援。