2026年01月01日 人事戦略・経営・外部活用
中小企業に人事専任は不要?必要になるタイミングと失敗しない判断基準(Vol.1)
≪はじめに≫ 新年あけましておめでとうございます!本日は2026年の元日であり、大安と一粒万倍日が重なる日ですが、実は「不成就日」も重なる珍しい暦となっています。お正月休みということもあり、本日は焦って新しいスタートを切るのではなく、今年一年の組織づくりや採用計画をじっくりと練るための「準備と見直しの日」としてお過ごしいただくのが大正解です。貴社にとって飛躍の一年となるよう、ヒューマンソリューションから人事コラムをお届けします。
中小企業に人事専任が必ずしも必要とは限りません。ただし、人事専任が不要 なのではなく、人事機能まで不要なわけではない という点は見落としてはいけません。
採用、定着、評価、教育、労務対応、管理職支援。
これらは、会社の規模が小さくても必ず発生する経営課題です。
問題は、「人事の仕事がない」のではなく、誰かが片手間で抱え込み、見えないまま後回しになっていることです。その結果、採用が属人的になり、教育が現場任せになり、評価制度が機能せず、離職が増えるという状態に陥ります。
つまり、中小企業が考えるべきことは「人事専任を置くかどうか」だけではありません。
本当に重要なのは、自社の成長段階に合った人事機能の持ち方を決めることです。
中小企業に人事専任は本当に必要なのか
結論からいえば、中小企業に人事専任が必要かどうかは、社員数だけでは決まりません。
重要なのは、人に関する経営課題がどれだけ複雑になっているかです。
たとえば、社員数が20名でも、
- 採用が継続的に必要
- 若手が定着しない
- 評価制度がうまく回っていない
- 管理職育成が進まない
- 労務対応の判断が難しくなってきた
という状態であれば、すでに人事機能の強化が必要です。
一方で、社員数が30名を超えていても、組織が安定しており、採用も教育もある程度仕組み化されていれば、すぐに専任採用が必要とは限りません。
つまり、判断基準は「人数」ではなく、人事課題の量と質です。
人事専任がいなくても回る会社の特徴
中小企業の中には、人事専任がいなくても一定程度うまく回っている会社があります。
そのような会社には、いくつかの共通点があります。
- 経営者が人に関する方針を明確に持っている
- 管理職が育成や評価の役割を理解している
- 採用や教育の流れがある程度仕組み化されている
- 労務対応を信頼できる専門家と連携できている
- 人に関する課題が属人化せず、共有されている
このような会社では、専任者がいなくても「人事機能」がきちんと存在しています。
だから回るのです。
逆に言えば、人事専任がいなくても問題ないのは、人事の仕事を誰かが見えない形でやってくれているからです。
人事専任がいない中小企業で起こりやすい問題
人事専任がいない会社で本当に怖いのは、「特に困っていないように見える時期」があることです。
日々の業務はなんとか回るため、問題が見えにくいのです。
しかし、実際には次のようなことが少しずつ積み上がっています。
- 採用基準が曖昧で、いい人が採れない
- 採用できても早期離職が続く
- 教育が現場任せで、育成にばらつきが出る
- 評価制度が形だけになり、納得感が低下する
- 問題社員対応が後手に回る
- 管理職がプレイヤー業務に追われ、マネジメントできない
- 経営者が細かい人事判断を抱え込み続ける
こうした状態が続くと、ある日突然、採用難、離職、管理職疲弊、組織の停滞という形で表面化します。つまり、人事専任不在の問題は、静かに進行しやすいのです。
中小企業で人事専任が必要になるタイミングとは
では、どのようなタイミングで人事専任を検討すべきなのでしょうか。
一つの目安は、経営者や現場だけでは人に関する課題を回しきれなくなった時です。
特に次のような状況が見えたら、人事専任またはそれに準ずる体制を検討するタイミングです。
採用が継続課題になっている
単発の採用ではなく、毎年あるいは常時採用が必要になっている会社では、採用活動の設計、求人票改善、面接品質の標準化、入社後フォローまで一貫して考える必要があります。
採用を片手間でやっていると、応募も集まらず、せっかく採っても定着しません。
この段階では、すでに人事機能の強化が必要です。
評価と教育が現場任せになっている
社員数が増えると、「見て覚えろ」「上司次第」という育成では限界がきます。
また、評価制度があっても、運用がばらばらだと不信感の原因になります。
評価と教育がつながっていない会社は、人が育たず、管理職の負担だけが増えます。
こうした状態は、人事専任の必要性が高まっているサインです。
経営者が人事判断を抱え込みすぎている
中小企業では、採用の最終判断、昇給、異動、問題社員対応、退職面談などを、経営者が一手に引き受けていることが少なくありません。
しかし、経営者がすべての人事判断を抱え込む状態は、組織拡大と両立しません。
そのままでは、経営判断のスピードも落ち、属人的経営が固定化します。
社員数が増え、管理の難易度が上がっている
特に30名規模を超えてくると、経営者の目が全員に直接届きにくくなります。
この段階からは、採用、育成、評価、配置の仕組みが必要になります。
人数が増えるほど、現場任せでは組織運営に限界が出ます。
このタイミングで人事専任、または外部人事の活用を考える価値は大きくなります。
人事専任を置かない場合でも必要な3つの人事機能
中小企業が最初からフルタイムの人事専任を採用するのは、コスト面でも現実的でない場合があります。その場合でも、最低限、次の3つの人事機能は持つ必要があります。
1. 採用と定着をつなぐ機能
採用は採ることが目的ではありません。
入社後に定着し、戦力化して初めて意味があります。
そのためには、
- 求人票の設計
- 面接基準の整理
- 入社前後のフォロー
- オンボーディング設計
まで含めて考える必要があります。
2. 評価と育成をつなぐ機能
評価制度を作るだけでは人は育ちません。
大切なのは、評価を通じて何を期待し、どのように育てるかを明確にすることです。
そのためには、
- 評価基準の整理
- 面談運用
- 育成課題の明確化
- 管理職への支援
が必要です。
3. 労務と現場運営をつなぐ機能
就業規則や法令対応はもちろん大切ですが、実際の現場では「ルールをどう運用するか」が重要です。
たとえば、
- 問題社員対応
- メンタル不調者対応
- ハラスメント初期対応
- 有休、残業、勤怠の運用判断
などは、単なる事務処理ではなく、現場理解と経営判断の両方が求められます。
中小企業が選べる人事体制の選択肢
中小企業が取れる選択肢は、「専任を採る」か「何もしない」かの二択ではありません。
実際には、いくつかの持ち方があります。
経営者や管理部門が兼務する
創業期や小規模段階では、経営者や総務担当が兼務する形は現実的です。
ただし、その場合でも採用、教育、評価の流れを見える化しておかないと、属人的になります。
外部の人事顧問や人事代行を活用する
専任採用までは難しいが、人事機能は必要という会社には、外部活用が有効です。特に、採用設計、評価制度運用、面談支援、管理職支援などは、外部の知見を入れることで一気に整いやすくなります。
将来的に専任採用へ移行する
採用数が増え、組織課題も複雑化してきたら、将来的に専任人事を採用する選択も有効です。
ただし、その際も重要なのは「何を担う人事なのか」を明確にすることです。
ただ人事担当者を一人採れば解決するわけではありません。役割設計が曖昧なまま採用すると、結局は雑務に追われて本来の人事機能を果たせなくなります。
人事専任を置く前に整理すべき判断基準
人事専任を置くかどうかを判断する前に、次の視点で整理しておくことが重要です。
今、最も重い人事課題は何か
採用なのか、定着なのか、評価なのか、労務なのか。まずは自社の課題を特定しなければ、必要な人事機能も決まりません。
社内で担えることと担えないことは何か
経営者、管理職、総務、現場責任者、それぞれが担える範囲を整理することが必要です。
そのうえで足りない機能を外部化するのか、内製化するのかを判断します。
人事専任に何を期待するのか
採用担当なのか、制度運用担当なのか、教育担当なのか。役割が曖昧なまま採用すると、何でも屋になりやすく、成果も見えにくくなります。
中小企業が人事専任を検討すべきか分かるチェックリスト
自社が人事専任を検討すべき段階かどうか、次の項目を確認してみてください。
- 採用活動が継続的に発生している
- 採用しても早期離職が続いている
- 評価制度が形だけになっている
- 教育が現場任せで、育成にばらつきがある
- 管理職がマネジメントより実務で手一杯になっている
- 労務トラブルや問題社員対応が増えている
- 経営者が細かな人事判断を抱え込み続けている
- 社員数の増加で組織運営が難しくなってきた
複数当てはまる場合は、人事専任の採用まではいかなくても、少なくとも人事機能の再設計が必要です。
よくある質問
絶対ではありません。ただし、人事専任がいなくても、人事機能そのものは必ず必要です。採用、定着、評価、教育の課題が増えているなら、何らかの形で強化する必要があります。
必要です。人数が少なくても、採用、育成、定着、労務対応は発生します。むしろ少人数の会社ほど、一人の離職や採用ミスの影響が大きいため、人事の重要性は高いといえます。
あります。まずは採用、教育、評価、面談、労務対応の流れを見える化し、誰がどこを担っているか整理することです。そのうえで、外部人事顧問や人事代行を活用する方法もあります。
「社労士と契約している=人事機能が十分である」は同じ意味ではありません。社労士は労務や法令対応の専門家として非常に重要です。ただし、採用、教育、評価、定着、管理職支援まで含めた「人が育ち、定着する仕組みづくり」は別の機能が必要です。
まとめ
中小企業に人事専任が不要かといえば、必ずしもそうではありません。
本当に問うべきなのは、「専任を置くかどうか」ではなく、「人事機能をどう持つか」です。
人事専任がいなくても回る会社はあります。ただしそれは、採用、定着、評価、教育、労務対応が、誰かの努力によって見えない形で支えられているからです。
もし今、
- 採用がうまくいかない
- 採っても定着しない
- 評価制度が回らない
- 管理職が疲弊している
- 経営者が人事を抱え込みすぎている
という状態があるなら、それは「人事専任が必要かもしれない」というより、人事機能の再設計が必要なサインです。
中小企業にとって重要なのは、立派な人事部を作ることではありません。
自社の規模と成長段階に合った形で、人が育ち、定着し、組織が回る仕組みを持つことです。
その視点で人事を見直すことが、採用難や離職、管理職疲弊を防ぎ、次の成長につながる一手になります。
【次回予告】1月7日(水)
地方の中小企業は採用できない?応募が来ない理由と採用を成功させる方法(Vol.2)
この記事の著者
葆東雅仁(ほうとう まさひと)
株式会社ヒューマンソリューション 代表取締役
HR・人材領域に24年携わる人事コンサルタント。栃木県を中心に中小企業の採用・評価・育成を一体で支援。
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