大安吉日人事のコラムCOLUMN

2026年06月11日 労務・制度・法令対応

多様性を成果に変える最後の一手とは?栃木の現場で今、DEIBが必要な理由(Vol.27)

栃木の空の下、日々汗を流して経営に邁進されている皆様、いかがお過ごしでしょうか。ヒューマンソリューションがお届けするこのコラム、本日も代表の私、葆東(ほうとう)が、これからの組織づくりに欠かせない、しかし多くの現場で見落とされている視点について、お伝えします。


一時期、ビジネスシーンで「DEI(多様性・公平性・包括性)」という言葉を耳にする機会が急増しました。多様な人材を認め合い、公平に扱う――。もちろん、それは非常に大切なことです。

しかし、私は栃木県内の多くの企業様と向き合う中で、一つの違和感を抱いてきました。

  • 多様な人材を採用したものの、結局馴染めずに辞めていく「早期離職」
  • 社内制度は色々と整えたのに、現場にはどこか冷めた空気が流れている現状

こうした悩みの原因は、実はDEIのその先にある「B」――つまり「Belonging(帰属意識・心理的な居場所)」の欠如にあります。

結論から言えば、形だけの制度ではなく、社員が「ここにいていいんだ」と思える居場所をデザインすること(=DEIB)こそが、これからの時代の中小企業が生き残るための最大の鍵となります。

1. なぜDEIだけでは失敗するのか?欧米で広がる「ポリコレの罠」と形骸化

なぜ今、DEIに「B」が必要になったのか。その背景には、多様性の本場である欧米で起きている大きな揺り戻しがあります。

原因は、過度な「ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス=社会的な正しさの追求)」にあります。

「正しさの押し付け」が現場の分断を生む

企業が「正しさ」という数値目標やポーズを優先しすぎた結果、現場では深刻な分断が生まれました。

  • 多数派の社員:「何を言っても責められる」と萎縮してしまう
  • 少数派の社員:「ただの数合わせ(属性の比率合わせ)で呼ばれただけでは」と疑心暗鬼になる

これが、世界中で議論されている「DEIの形骸化」の正体です。数値や形式ばかりを追い求め、肝心の「一人ひとりの心」を置き去りにしてしまったのです。

2. 組織を一つに編み直す最後のピース「B(帰属意識)」とは?

この閉塞感を打破するために、デロイトなどの世界的な研究機関や現場の心理学者たちが提唱したのが「DEIB」という考え方です。

いくら多様性(D)や公平性(E)を整えても、その場所に「心が繋がっている実感」がなければ、人は最高のパフォーマンスを発揮できません。

💡 B(Belonging)の本質とは 日本語で言えば「帰属意識」や「心理的な居場所」のこと。誰かの顔色をうかがう「正しさ」ではなく、「ありのままの自分でここにいていいんだ」という安心感を指します。

大企業のような豪華な福利厚生や厳格なマニュアルは用意できなくても、私たち栃木の中小企業には「顔の見える距離感」があります。一人の人間として存在を丸ごと受け入れる。この地域密着の温かさこそが、最大の武器になります。

3. 中小企業が「帰属意識(B)」を高めるための5つの実践ステップ

宇都宮市をはじめ、栃木の現場で今日から実践できる「居場所づくり」の5つのステップです。

① 徹底的な「個」への関心と声掛け

まずは経営者自身が、社員一人ひとりの背景に深く関心を持つことから始まります。「名前を呼ぶ」「最近の体調を気遣う」といった、当たり前の積み重ねが大切です。 「自分を見てくれている」という実感こそが、帰属意識の第一歩となります。

② 役割の明確化と「貢献」の可視化

どんなに小さな業務でも、「それが会社の利益や、地域の誰の役に立っているのか」を言葉にして伝え続けてください。 「自分はこのチームに必要とされている」という実感が、組織への誇りへと変わります。

③ 心理的安全性を担保する「失敗の共有文化」

新しい挑戦に失敗はつきものです。失敗を責めるのではなく、「学習の機会」として歓迎する空気を醸成してください。 誰もが自分を飾らずに、等身大で意見を言える環境こそが、最高の居場所になります。

④ 共通の目的を「栃木の言葉」で泥臭く語り合う

難しい横文字の理念ではなく、「自分たちがこの地域で何を成し遂げたいのか」「地域社会にどう貢献したいのか」を熱く語ってください。 同じ志を持つ仲間であるという感覚が、深い絆を生みます。

⑤ 透明性の高い情報共有と参画機会の提供

会社の現状や未来の計画を、可能な限りオープンにしてください。一方的な通達ではなく、社員が意見を言える場を設けることで、「自分も会社をつくる一員だ」という当事者意識が強固になります。

4. まとめ:数値ではなく、目の前の社員の心に居場所を作る

欧米の失敗から学ぶべきは、「形だけの正義や数値に走らないこと」です。

DEIBの本質は、制度の導入ではなく、経営者が「個」に向き合い、信頼の種をまき続けることにあります。目の前の社員の心に居場所を作ることに注力すれば、組織の結束力は劇的に向上します。

栃木の企業が、どこよりも温かく、どこよりも強い組織になれるよう、私たちも全力で伴走してまいります。

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次回予告 6月15日(月)

賃上げ原資を捻出する「生産性連動型」評価の導入(Vol.28)


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